YUIの高校生活は一年と続かなかった。
YUIは中学の終わりに、進学先を通信制の高校に決めた。
通うためのお金が安くてすむからである。
そして、空いた時間を使ってバイトでお金を稼ごうと考えていた。中学生がそういうことを考えなければならない環境だったのだ。
しかし、YUIは、娘を想う母親の願いに従い、私立の女子高に通うことになる。
それでもYUIはできるかぎり高校の授業料は自分のバイトで稼ごうと決めたいた。
YUIが言うには、バイトをやっていた頃の睡眠時間は1、2時間しかとれなかったそうだ。常に睡眠不足の生活。
その無理がたたり、YUIは肺炎で入院してしまう。
その入院をきっかけに、YUIは高校を辞め、音楽の道へ本気で進むことを決める。
このとき、YUIには何もなかった。
福岡の小さなの歌コンクールで優勝したという小さな自信しかなかった。
それ以外になにもなかった。
今のようにギターも知らず、作曲をしたこともなく、業界にコネも知り合いもなかった。
どうすれば音楽の世界で生きているかなど、知るすべさえも持っていなかった。
ただの、貧乏で世間知らずな田舎の小さな女子高生でしかなかった。
歌だけが、YUIの希望の光だった。
子供の頃ひとりで家にいたときに聴いていた音楽。
バイト疲れた帰りに田んぼの真ん中で歌った歌。
キツい現実からの逃避・・・・
灰色の日常に、唯一のようにきらめく、歌。
当時のYUIにとって、歌は逃げ出すための手段だったのかもしれない。。
ギリギリの飛翔だった。
いや、ほんとうは、このとき既にYUIの隣に音楽塾ヴォイスの西尾がいたのかもしれない。
YUIのインタビューでは、この時期のことがぼやかされているが、西尾のインタビューでは、YUIとの出会いを、YUIが中学3年生の頃だったと明言している。
音楽業界のややこしさが見え隠れする・・・
YUIが高校を辞めたのも、本気で音楽で生きていこうと決めたのも、もしかしたら西尾の意向があったのかもしれない。西尾が、自分の夢と野望をYUIに託していたと言ってもいいすぎではないのかもしれない。 ほんとうのことは、私たちには(まだ)明らかにはされないだろう。
運命のように、YUIは、ビアンコネロを通して西尾の音楽塾と出逢う。
きっかけは、YUIの友人が誘ってくれたストリートライブだったという。
YUIの音楽の楽しさの原体験のひとつがこのときのビアンコネロのストリートライブであったという。
YUIは、夜のストリートで奏でられるギターと歌声のキラキラした風景に心の底から感動したという。
YUIの胡座をかいてギターを弾き歌うスタイルは、ビアンコネロがそうだったから産まれたスタイルだという。
YUIはこのスタイルをはじめての単独ストリート、そして、デビューのきっかけとなったソニーのオーディションでやってみせたのだった。
YUIは、どうすればミュージシャンになれるのかをビアンコネロに尋ねた。
ビアンコネロは、YUIを音楽塾ヴォイスに連れて行った。
音楽塾ヴォイスとは、元歌手である西尾が、関東で夢破れ、その後、福岡で立ち上げた音楽塾だ。決して広くはないマンションに様々なアーティスト希望者を集め、西尾の作り出した音楽メソッドを教えている。歌手の綾香も、この塾の卒業生であり、西尾自身がプロデューサである。(ちなみに、熊本出身のスザンヌもちょっと在籍してたようだ)
西尾の前に現れたYUIは、歌も楽器も出来ない女の子だった。
狙っているかのような地味な服装と、あか抜けない表情、さえない雰囲気。
この子は大丈夫なのかと、心配になる朧げな佇まい。
歌もそんなにうまくはなかったが、面白い声を持っていた。
西尾は、そんなYUIに音楽を教えていくにしたがい、しだいにYUIの魅力を見いだしていき、しまいには自らの家賃に困るような状況なのに、生活の面倒までをも見てしまうほどに入れあげていくようになる。
西尾自身は、20代にメジャーデビューの後、鳴かず飛ばずで夢破れた。 音楽を離れ、営業マンで生活の糧をやつし、転勤でおとずれた福岡で、知り合いに音楽の講師の仕事を頼まれたことから、再び音楽への思いに火がついたが、知人のスクールで音楽を教えることに限界を感じ、自らのスクールを立ち上げた。
ワンルームの音楽塾。
若い頃の感性だけに頼っていた自分への反省から、西尾はビートルズをはじめとするヒット曲の解析に没頭し、感性だけに頼らない音楽のメソッドを作り上げていった。 ヒット曲に共通する「心に響く悲しいリズム」や「気持ちが弾むメロディー」といった法則や、メロの展開の面白さ、サビの引き立てかたなどを、西尾は、独自の解釈で練り上げていったのだ。
そして、そのメソッドを、自分の塾生に教えていった。
その塾生の一人がYUIであった。
YUIに最初のギターを与えたのも、西尾である。
YUIが「TOKYO」で歌った、
♪古いギターをアタシにくれたひと 東京は怖いって言ってた
彼が西尾である。
つづく。
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前作から、約1年ぶりの復帰第一弾シングルですね。























